TSUGU MAGAZINE VOL.08



BOOTES ARCTURUS custom

牛革の復権。

BOOTESが切り拓く、“新しい無骨さ”のかたち。

いま、レザージャケット市場の中心にあるのは馬革だ。
その独特な艶、繊維密度の高さ、経年変化の鋭さ──。
多くのブランドがホースハイドを追い求め、ヴィンテージ市場でもその価値は年々高まり続けている。

そんな時代の流れに、あえて逆行するように誕生したブランドがBOOTESだ。

BOOTES──牛飼い座。
その名に込められているのは、“牛革の可能性を再定義する”という強い意思である。

手掛けるのは、FINE CREEK LEATHERSで数々の名作を世に送り出してきた山崎佳克氏。
馬革という深淵を知り尽くした男が、次なる舞台として選んだのは牛革だった。

それは単なる素材変更ではない。
むしろ、レザーウェアの価値基準そのものに問いを投げかける挑戦と言っていい。

今回ベースとなったのは、1960年代に実在した名作ライダースの前期型。
当時特有の荒々しさや無骨な空気感を残しながらも、現代的なバランスへと再構築されている。

特筆すべきは、やはり革だ。

使用されるのは、3.0mm厚以上という極厚のステアハイド。
厳選された牛革をフルベジタブルタンニンでじっくりと鞣し、そこから2.5mm厚へと漉き加工。
さらに染料のみで仕上げることで、“茶芯”特有の奥行きある経年変化を引き出している。

表面だけを整えた軽薄な革ではない。
繊維の密度、重量感、そして着込むことで初めて現れる表情。
そのすべてが、“革を育てる”という本来の楽しさを思い出させてくれる。

バックルや金具類に至るまで、妥協はない。
スチール製パーツをオリジナルで型から起こし、細部まで当時の空気感を宿している。
ただヴィンテージを模倣するのではなく、“現代に存在するヴィンテージ”として成立させている点が、この一着の凄みだろう。

そして、このモデル最大の特徴がカスタムディテールにある。

本来存在するエポレットとウエストベルトを大胆に断ち切り、切り落とした痕跡すらデザインへ昇華。
あえて余剰部分を残すことで、まるで長年着倒された一点物のような空気を纏わせている。

切断されたエポレット跡。
残されたスナップボタン。
宙に浮くようなベルトループ。

完成されすぎていないからこそ生まれる、“不完全さの美学”。
その荒々しさこそ、このライダース最大の魅力なのかもしれない。

もちろん、無骨なだけでは終わらない。

シルエットは往年のライダースを踏襲しつつ、パターンを細部まで見直すことで現代的にアップデート。
肩周りやアーム、着丈のバランスは非常に洗練されており、街着として成立する完成度を持っている。

デニムに合わせて王道のアメカジを楽しむのもいい。
スラックスやウールパンツと合わせ、都会的に崩すのも面白い。
“古着的価値観”だけで終わらせない懐の深さが、このジャケットにはある。

革の厚み。
重量感。
着込むほどに浮かび上がる茶芯。
そして、削ぎ落とされたディテールの痕跡。

BOOTESが提示するのは、単なるライダースではない。
それは、“牛革という素材そのものの存在感”を再認識させるための一着だ。

馬革全盛の時代だからこそ、あえて牛革を選ぶ意味がある。

無骨さと革の本質を求める者へ。
BOOTESが描く、新たな牛革ライダースの完成形を、ぜひその身体で体感してほしい。